年をとるって素晴らしい

パリでの話を続けます。

 

一般的に、歳をとることについて否定的であることが多い日本。特に女性に関してはなおのこと。

ちょっと理解に苦しみます。月日が流れれば年齢が増えていくのは当然なのに、年をとること、年をとったことの、何をそんなに恐れるのでしょうか?

 

さて、先日のパリで、わたしは懐かしい友達に再会しました。晶子ちゃんという彼女との出会いは二十歳の時。

学生だったわたしは卒業したらフランスに留学(という名目で就職から逃れる)したいと、漠然と決めていました。美術が好きだったので、美術史でも学んで、絵画の修復などをやったらいいと思っていたのです。

とにかく就職が嫌だった、毎日同じ満員電車に乗って通勤する、と考えただけでクラクラするので、なんとか回避したかった。能天気ですが、わたしの考えることは今も昔もそんなことです。

だから就職活動もしなくていい、と決めていたわけなのですが、母親がそんなわたしに

「あなた、なんだか決めつけてるけど、本当にパリが気にいるかどうかわからないんだから、見て来なさい」

と言うのです。

それもそうだなと思って、確かにわたしは地図上でしかパリを知らないし、専攻していたというのにフランス語もおぼつかない実情がありました。
(それなのに悠然としていた自分の大物ぶりにも驚きます)

それで学生向けの1ヶ月ぐらいヨーロッパを回るツアーパッケージがあるので、それに参加することにしました。

後にも先にも、母親がわたしにくれたアドバイスで実践的だったのはこの一件だけです。

そのツアーで知り合ったのが彼女で、約1ヶ月の行程を同室で、同じものを見て、同じ経験をして過ごしました。

それ以来の親友です。

 

その後、彼女はカリフォルニアで働いたり、ニューヨークに引っ越したり、その間わたしはミラノにいたりで、たまにお互い訪ねて会ったりしましたが、フランス人と結婚してパリに越してからは、しばらく会えずにいました。

親友というのは素晴らしいもので、日頃特に連絡をとったりしていなくても、「パリに行くよ!」と言えば万障を繰り合わせてでも時間を作ってくれることが嬉しい。
2人でパリにいるというのも、その旅行以来30年ぶりで、なんだか不思議でもあり、この月日の流れが、なんて素敵なことなんだろうと思わずにはいられません。

 

IMG_0847約10年の時を経て、会えば話は弾むし、時の流れを感じません。
彼女の職場の近くの、オーソドックスなレストランへ。

向こうのテーブルでは某国大使ご一行が大勢でくつろいでいます。わたしは選んだアンコウのムニエルが美味しく、この上ない幸せ。

そこでわたしたちの30年前、学生旅行でのパリの出来事を思いましました。

 

誰かが、今日の夜は食べに行かず、それぞれお惣菜を買って来て部屋で食べようと言い出したのです。

それでわたしはワインを買ったものの、部屋にはオープナーがないことに気づき、ルームサービスに電話するも通じず、ホテルのレストランまで行って開栓してもらうというマヌケさ加減。

誰かが買ってきたパンを食べたら、「なにこれまずい!!!」。本当に、人間の食べ物とは思えない味だったのです。
ねえ、フランスってパンが美味しい国なんじゃないの?と大ブーイング。パン担当だった子が、その辺のスーパーで「激安の食パン(1フラン=当時20円ぐらい、にも満たない!)を見つけたから、お得だと思って買ってみた」というので一同言葉を失い。

どうしてこんなまずいものが売られているのか?犬用じゃないのか?それを買う日本の旅行者って何?・・・などとブツクサ言い、その晩を呪った。。。。

 

 

まあ、さんざんな晩さんがあったよねえ、、、、と思い出して笑いが止まらず。

IMG_0849食後にポルトを飲んで、楽しそうにしていたからか、店のオーナーがテーブルに来てよもやま話をして、シャルトルーズを1杯プレゼントしてくれました。

その時、わたしは、ああ、年をとったんだなと感じました。それはなんて素晴らしいことなんだろうと思って、しみじみして来ました。

二十歳の頃、ここの人たちにわたしたちはMademoiselleと呼びかけられていた。それが今では、Madammeと呼びかけられてもそれが自然だと普通に受け入れられるようになっている。それが時の流れというものなのでしょう。

昔は見えていなかったことが、年とともに見えるようになったり、あるいは老眼で文字が読めなくなったりして、見る必要のないものはそこにあっても気にしないでいることができます。

 

そして突然、「そうだ、30年前と同じように、バトームーシュ乗ろう!」と思いつき、2日後の最終便に乗りました。
あの頃「ふ〜ん」とか「大したことない」としか言わなかったものが、今の自分たちにどう見えるんだろう、ということで。
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パリはやっぱり美しい町だと思います。

でもわたしは、景色やものを見ているというより、それを見ている自分を見ていることに気づきました。

この30年の時間で、いろいろな体験をしてこれた。何に関しても得ることのみだったと思います。
そして、どこに行っても変わらない、どこでもくつろげる自分がいて、そんなくつろぎをともに味わえる人がいる。

パリがいいというよりも、人生っていいなと思うのです。

年をとるって素晴らしい。次の30年も楽しみです。